コラム

お金を貸すときに注意すること

千葉県佐倉市 わたなべ司法書士事務所 司法書士 渡辺健治 です。

親しい友人や親戚から、お金を貸してほしいと頼まれた経験がある方は多いと思います。そして、これまでの信頼関係から、すぐに返してくれると思い、契約書や借用書を書いてもらわずにお金を貸したことがある方も多いのではないでしょうか。その時、お金を返してもらえない事態を想定していたでしょうか?

返してもらえなくても問題ない金額なら、諦めがつくかもしれませんが、数十万円、数百万円(またはそれ以上)ものお金を貸して、返してもらえない場合、なかなか諦めがつかないものです。

お金を返してもらえない場合、最終的には裁判所の力を借りて、借主の財産(銀行口座、給料など)に対して強制執行することになりますが、強制執行するためには、「債務名義」という書類がなければなりません。債務名義に当たる書類として代表的なものは、判決、執行認諾文言付公正証書です。

判決をもらうためには、裁判所に訴状を提出し、借主に返済義務があることを認めてもらう必要があります。そのためには、①お金の返還約束があったこと ②お金を借主に渡したことを証明しなければなりません。

では、契約書や借用書がない場合、どのように証明すれば、いいのでしょうか。銀行振込により、お金を貸したのなら、通帳や利用明細票で②は証明できるかもしれません。しかし、①の証明には不十分です。もし、貸主、借主以外の第三者がお金の貸し借りの場に居たのなら、その第三者に証人になってもらうことで、①を証明できるかもしれませんが、貸し借りの場に第三者が居ることは少ないのではないでしょうか。

やはり、貸したお金を返してもらわないと困る場合は、契約書や借用書を書いてもらうべきです。契約書や借用書には借主の実印を押してもらい、印鑑証明書を添付してもらいましょう。そして、契約書や借用書には返済期限を明記してもらいましょう。返済期限を書いていなくても、時効にならない限り、お金を返してもらう権利は消滅しませんが、返済期限があることで、借主は多少なりともプレッシャーを感じるはずです(返済期限があるお金と、返済期限がないお金では、どちらを先に返しますか?)。

親しい人に契約書や借用書を書いてくれと言うのは、気が引けるかもしれません。しかし、返済能力も返済意思もある借主なら、当然のことのように書いてくれるはずです。書くのをためらう借主なら、返済能力、返済意思を疑ったほうがいいでしょう。それでもお金を貸す場合は、お金をあげるつもりで貸すことになります。

ほかにも、お金を貸すときにできる対策があります。例えば、①連帯保証人を立ててもらう ②借主の不動産に抵当権設定登記をする など。①は連帯保証人に資力がなければ、あまり意味がありません。②は、手続きが面倒なのと費用(通常は、借主が負担します)がかかります。貸す金額の大小や借主の返済能力などを考慮し、判断してください。

なお、債務名義に当たるものとして紹介した執行認諾文言付公正証書は、貸すときに作成しておくことによって、裁判所から判決をもらわなくても、借主の財産に強制執行することができ便利です。しかし、公証人への作成手数料が必要です。

以上、お金を貸すときに注意することを書きましたが、一番大切なことは、借主の返済意思と返済能力の見極めです。返済意思があっても、借主が定職についていなければ、給料を差し押さえることはできませんし、銀行口座に残高がなければ、差し押さえたところで、空振りになります。返済能力があっても、返済意思がなければ、返してもらうのに苦労します。お金を貸すときには、借主の返済意思と返済能力を見極めたうえで、契約書や借用書を書いてもらうようにしましょう。

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