コラム

未登記建物と相続登記の義務化

千葉県佐倉市 わたなべ司法書士事務所 司法書士 渡辺健治 です。

令和6年4月1日より相続登記が義務化されました。相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に法務局に相続登記を申請しなければなりません。そして、正当な理由がないのに相続登記の申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処せられるおそれがあります。

では、未登記建物(表題登記がされていない建物)を相続により取得した場合、相続登記を申請する義務はあるのでしょうか? 

条文(不動産登記法第76条の2第1項)は、下記のとおりです。

「所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。」

所有権の登記名義人について相続の開始があったことを前提にしていますので、未登記建物については、相続登記を申請する義務はないと考えられます。

ただし、別の条文で未登記建物の所有権を取得した場合、1ヵ月以内に表題登記を申請することが義務付けられており(不動産登記法第47条第1項)、これを怠った場合は、10万円以下の過料に処せられるおそれがあります。しかし、表題登記を申請しないことによる過料の制裁は厳密には運用されていないようです。

未登記建物を相続した場合、相続登記を申請する義務はありませんが、表題登記を申請する義務は一応あります。実際に表題登記を申請するかどうかは、過料の制裁を受けるおそれを考慮に入れ、判断してください。 なお、表題登記はご自身でも申請できますが、専門家に依頼する場合は、土地家屋調査士に依頼することになります。ご希望でしたら、土地家屋調査士をご紹介させていただきます。

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