コラム

権利証を失くした場合の対処方法

千葉県佐倉市 わたなべ司法書士事務所 司法書士 渡辺健治 です。

売買、贈与、相続などで不動産を取得すると、法務局から登記識別情報通知が交付されます。登記識別情報通知には、登記識別情報(数字やアルファベット12桁の符号)が記録されています。登記識別情報は、後日、不動産を売却したり担保権を設定するときに法務局に提供して、不動産の権利者の本人確認をするためのもので、昔の登記済証に代わるものです。登記識別情報通知や登記済証は、俗に権利証と呼ばれています。

不動産の売却が決まったとき、不動産屋さんから権利証を用意しておくように言われて、タンスの引き出しや押し入れの中を探しても見つからないことがあります。法務局に権利証を再発行してもらえるかというと、それは出来ません。それでは、不動産を売却することはできないのでしょうか。答えは、権利証がなくても売却することが出来ます。しかし、少々面倒な手続きが必要です。

1 事前通知制度を利用する。

権利証がなくても、買主への所有権移転登記を法務局に申請することができます。この場合、法務局は、売主の住所に本人限定受取郵便等で通知書を送付することになっています。この通知書は、売主に登記の申請が真実かどうか尋ねるものです。そして、登記の申請が真実である場合は、署名・押印して一定の期間内に法務局に返送しなければなりません。そうすることで、法務局は売主への本人確認をして、買主への所有権移転登記を実行します。

2 司法書士に本人確認情報を作成してもらう。

事前通知制度は、特段費用がかからず、売主からすれば便利なのですが、もし、売主が一定の期間内に法務局に返送しない場合、登記の申請は却下されます。買主からすれば、高額な売買代金を支払ったにもかかわらず、自分への所有権移転登記が実行されないという重大な不利益を受けることになります。したがって、売買に司法書士が立ち会って登記の申請をする場合は、事前通知制度を利用することはまずありません。もし、売主が一定の期間内に法務局に返送しない場合、司法書士の責任問題になりかねないからです。

そこで、売買に立ち会って登記の申請を担当する司法書士が、売主と面談し本人確認を行った際の状況などを記録した「本人確認情報」という書類を作成します。本人確認情報を法務局に提供し、法務局が相当と認めれば、事前通知制度の利用を回避することができます。法務局が売主の本人確認をする代わりに、担当司法書士が本人確認を行うといった感じです。

3 公証人に認証してもらう。

本人確認情報を作成することは、司法書士にとって責任の重い仕事です。面談した相手が売主になりすました人で、本人確認書類(運転免許証など)を精巧に偽造されるなどして、司法書士がなりすましを見破れなかった場合のことを考えていただければ理解いただけると思います。ですから、本人確認情報を作成することについて、責任に見合った報酬を売主さんから頂戴することになります。

本人確認情報作成の報酬は高額になりがちですから、本人確認を公証人にやってもらうという方法を選択する売主さんもおられます。具体的には、司法書士への登記申請委任状を公証役場に持ち込んで公証人に本人確認をしてもらい、登記申請委任状に公証人の認証文を付与してもらいます。公証人が認証した登記申請委任状を法務局に提出し、法務局が相当と認めれば、事前通知制度の利用を回避することができるというものです。(公証役場に行かれる際には、事前に予約し、持参するものを確認してください)

公証人の認証を受ける方法は、司法書士に本人確認情報を作成してもらうのと比べて、費用負担をかなり抑えられます。しかし、公証役場が近くにない場合や仕事を休めない場合には、利用しにくいかもしれません。

以上、権利証を失くしてしまった場合の対処方法を紹介しました。どの制度にもメリット、デメリットがありますので、担当司法書士に相談の上、判断していただければと思います。

なお、権利証を失くしたからといって、不動産の所有権を失うということはありませんので、ご安心ください。

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